意味ありげに私を眺め、


「それでは」



 地下室へ続く階段を降り、扉に手を当てた。

 軽い音を立てて扉は内側に滑り、中から蛍光灯の明かりが飛び出してきた。そこに薬品の臭いと死肉の甘い香りが混ざっていた。


 目の前で繰り広げられる光景は、今まで私が経験したどの内容よりも激しかった。

 果てしなく広い地下室の中に何百何千という死体が床に並べられている。それに群がる人のしていることも、私の興味の対象だ。死体から剥いだ皮を自分に纏い、その死体を貪り喰う男、頭とヤり続ける男、体の中に手を突っ込み奇声をあげ続ける女……


「アユミさん、こちらへ。あなたはもうお客ではないんです。まずはやることを覚えてもらいます。それからゆっくりと、楽しませてあげますから」

「高野もここへ来たの?」

「もちろん」意味ありげににやついた顔は私を挑発する。

「ここへ来たあと、私に喰われたわけ?」

「そうです」ゆったりとした動作で頷いた。

「高野さんはあなたの想像のはるか上をいっていました。この場所へ来ても決して満足しませんでした」

「……ここよりももっと……」


 ここへ来てもなお私に喰われたいと思ったのはきっとここで何かを見たからだ。この中で何があったんだろう。

 自分を燻製にさせてから私に喰わせたことの意味がきっとここにある。この中のどこかに隠されている。



 私は溢れ出てくる唾液を気づかれないように飲み込み喉を鳴らし、冷静を装い少年のあとを着いていく。



 そんな私の思いが手に取るように分かったのか、少年は地下室の中で行われている背徳の情事の数々に視線を置きながら口許を嬉しそうに緩めていた。

 私の行く末を分かっているように、これから起こる全てのことを把握しているように。不気味な笑みで私に笑いかけた。




【終】