私は今日からこの少年と生活を共にする。
毎日のようにここへやって来る『客』を出迎え案内し、そして吟味する。
いわば獲物だ。誰を狩るか、気がすむまでよく考えられる。あの女のように。
ここへ初めて来たとき、あの女は桜の木の下にいた。そして私を見て笑った。あのあとあの女は私を喰いたいと言ったそうだ。私が子供の時からずっと片時も忘れたことはない。私がここに来るのをずーっと待っていたと言った。
しかしそれは高野が許さなかった。
あの女も高野には逆らえなかったということか。あの二人に何があったのかは知らないが、そのおかげで私はあの女の獲物にならずにすんだ。
獲物に拒否権はないからだ。
そう思えば私に喰われていったやつらはみんな泣いていたっけ。私に喰われるのが嫌だったのか、それともそれ全てが自ら立てたシナリオなのか。
私も高野のシナリオの中にいた。最後まで彼のシナリオ通りに動いていた。もしかしたらこうなることさえも彼のシナリオの中なのかもしれない。
「私はいつまでたっても高野にはかなわないということか」

