「待って。ナオミって、だれ?」
「アユミさんに最初の植え付けをした女性です」
「そう。名前はじめて知った」
「あなたは珍しく名前に執着しませんでしたので、無理もありません」
私は今まで殺してきた人の名前も知らないんだ。あの女の名前さえも知らなかった。
私の中にいる人たちの名前なんて、高野以外知らない。そもそも名前なんて覚える必要もなかった。
それでもちゃんと喰った肉の感触や味はしっかりと覚えている。
この少年の名前もそういえば知らない。そう思っても知ろうとも思わないけれど。
「それではアユミさん、これからのことなんですけれど」
私の気持ちが変わらないことを確認するとまたいつもの飄々とした態度に戻った。これがこいつの仕事なんだ。
私がいなくなるのが寂しいわけじゃない。途中で計画を変更されるのを懸念しているだけにすぎない。

