ハメごろし


 血だらけのノコギリを首に当てると、狂いそうなほどに鼻からうなり声を上げた。

 真っ赤に充血した目で私に命を乞う。涙をとめどなく溢しながら眉間にしわをよせて悔しそうに睨む。


「その顔が見たかった。怖くて怖くて仕方がないというその顔が、私ね、とっても見たかったの」


 男の血のついたノコギリをツ……と舐め、味を確かめる。


「……おいしい。でも大丈夫よ、あなたは食べるために殺すわけじゃないから」



 もうこの騒ぐ物にも飽きてきた。流れ出る血もその匂いも味も堪能したし、私の望む通りに騒ぎ倒すこいつにももう満足した。

 充分楽しんだ。


 もうあとはうるさいだけだ。

 さっさと解体してしまおう。


 首にノコギリを当て、



「__ん__ん__ん__ん!!!」



 呼吸が乱れながら猿ぐつわの間から涎をとめどなく垂らし、そろそろこの涎で窒息するのが目に見えて分かったとき、


 体重をぐっと押し込んで首深くに刃を入れ込んだ。


「……切れない」


 腕や足を切った血で切れなくなっていて、首の骨までぶった切ることにはならなかった。