ハメごろし


 揺れた。



 鏡の中の自分の瞳の奥が揺れた。安心した。




 おばあちゃんが来てくれる。





『自分の瞳の奥を46分間見続けるんだ』




 長いと思った。最初はそんなことできないよって思っていた。でも、目の奥が揺れたらもう大丈夫なことを知っている。




 だって、そうしたら……




 鼻先が鏡に触れた。




 おでこが鏡に触れた。




 手を捕まれた。鏡の中からがしっと両手をぎゅっとされた。そのままいつものようにズルズルと鏡の中に引き込まれていく。目を開けたままだから、冷たさが眼球に当たって気持ちがいい。



 鏡に当たっていた腿が鏡の中に入りこんだ。




 私の体が鏡の中に全て引き込まれると私はいつもそこで記憶がなくなるんだ。





 次に気づくと必ずベッドの中にいる。