ハメごろし


『仕方のない子だね。こっちへおいで』



 おばあちゃんの声が聞こえた。無我夢中でドアを叩いていた。




『そんなことしたって開かないさ。落ち着いて回すんだ。簡単だろ?』




 落ち着け? こんな状況で落ち着いてなんかいられない。恐い。後ろにいるアレが恐い。





『大丈夫だよ。あたしがついてるんだ。お前は大丈夫だよ』





 鼻で深く呼吸して、瞬きを一度。




『ここまで来るんだ。じゃないと助けられないよ』




 助かるんだ。私は守られている。そう思うと身体から力が抜けていった。


 何事もなかったようにドアは開き、冷たい廊下を歩き、




『ここだ。そう。昨夜みたいにここへ来るんだ、同じようにするんだよ。ほら、おいで』