黒い影はリビングへと消えた。私は鏡から視線を剥がし、薄く開いているリビングへ足を向けた。 キー……キー……という音はいまだに響いている。 唾を飲んだ。 ドアをそっと押すと軋んだ音を響かせて内側に開く。 「誰か、いるの?」 声は震えていた。呼吸が早くなってきて、そして、その先に見たものに心臓は凍りついた。 声が出ない。 足が震えて動けない。 体が激しく震えて歯がガチガチ鳴る。