「ターゲットを探すんだ。僕がいなくなったらきっと君自身で新たな肉を探したくなるはずだ。それに従うといい」



「私はあなたしか食べない」



「今はね」ふんと鼻を鳴らした。




 私は毎日少しずつ冷蔵庫から『彼』を出して食べられるだけ切り分けては香り付け程度に燻したり炙ったりして想い出とともに噛み砕いて胃袋に流し込んでいった。




 腹を、腕を、指をしゃぶり肋骨にこびりついている肉を歯で削ぎとった。骨を折ってしゃぶると中から熱いドロッとしたものが溢れてくる。




 内臓は独特な味がしていた。これは最初はその癖の強さに顔を背けたくなるが、慣れればこれだけしか欲しくなくなると言っていた。




 柔らかい内腿の肉はするりとほぐれ、食べるのに苦労はしなかった。






「さあ、君は君の最後までに何人をその体に取り込むんだろう。どんなものを選んで来るんだろう。それは君の中から見守ることにするよ」




 わたしはあなたしかたべない。




 肉を口に運びながらそんなことを一人思っていた。