ドルチェ セグレート

「四六時中、周りの目を気にするのも疲れる話だし。それに、俺が知る限りでは、引くほどのことなんかなかったし」

今日の陽気と同じように穏やかに微笑み、目を伏せる。
そんな神宮司さんに、胸をきゅうと締め付けさせた

「……でも、神宮司さんは、お鍋のまんま食べたりしませんよね?」
「……まぁね」
 
照れ隠しもあり、具体例を挙げると、数秒考え込んだ神宮司さんが正直に肯定する。
わかり切ってたはずで墓穴を掘っただけのことなのに、いざ面と向かって口にされるとずーんと落ち込んでしまった。
 
肩を落とし、遠くの地面一点を見つめる。 
再三わかっていたことではあるけど、自分ってダメ女子だな、と項垂れた。

「だけど、部屋のコーディネート?っていうの? あれはすごいんじゃない? 拘ってる感じだったから。だらしない人間にはできないと思うけど」
「え? 部屋?」
 
自爆して心を折った私の耳に聞こえた神宮司さんの言葉は、少しずつ気持ちを浮上させる。

「俺は職業柄、飲食に関しては細かいかもしれない。けど、洗濯だって皺だらけだし、干したとこから着たりするし。そんなもんじゃないの? 誰だって」
 
気を遣ってフォローしてくれてるんだろうと思いつつ、それでもこんなふうに言ってもらえるだけで、立ち直れる。

なんて単純なヤツなんだ、私って。
いや。私が単純っていうよりも、そうさせてしまう神宮司さんの存在と、彼への恋心の力が凄いんだ。