「ねぇ、志穂ちゃん。私、外で待っててもいいけど……」
「なに言ってるんですか! それじゃ結局、また私ひとりで来たみたいじゃないですか。それに、慎吾さんがいたら、河村さんからもうまく話引き出して下さいよ」
「えぇっ……」
目と鼻の先にランコントゥルが見えた頃に、勇気を出して切り出したものの敢え無く玉砕。
逆に自分で自分の首を絞めるような結果になって、口を閉ざす他なかった。
いつもなら、店先に少しずつ近づくだけでドキドキワクワクする心境が、今日は全く違うものだ。
ハラハラビクビク。
別に悪いことは……してないはずなのに、なんでこんなに居心地が悪いんだろう。
足元からの大きな窓ガラス越しに、店内の様子を窺い見る。
私の気持ちなんか関係なく、そこにはいつもの穏やかで温かい印象の〝patisserie de rencontre〟があった。
「今日こそ会って、話出来るかなぁ」
志穂ちゃんは、ウキウキとした様子で歩き進める。
私は、無意識に顔を隠すように俯き、志穂ちゃんの後をついていった。
店内に入ると、想定外の場面に遭遇する。
「そうそう。そのフランスの……あ。お客さんだね。じゃあ、また」
「ああ、気をつけて」
ショーケース越しに、親し気に笑い合って会話を交わしていたふたり。
こちら側に立っていたのは女の子。
その子は私たちの入店に気づくと、話を止めて、出口へ踵を返した。
目前まで来た時にその子を見ると、まるでお人形のような顔立ちの可愛い子で目を奪われる。
透き通るような白い肌に、カールされてる長い睫毛。
大きな瞳は少し色素が薄くて、本当に造られたもののように美しい。
ふわふわとしたスカートを揺らし、胸までの茶色いロングヘアを靡かせ、私たちを横切って行く。
その際、視線が合うと、にっこりと三日月のように目を細められた。
……いい香り。さりげなく甘くて、見た目通りの香りだ。
すれ違いざまに軽く会釈され、つい、彼女の後姿を目で追ってしまった。
「こんばんは。慎吾さん!」
「なに言ってるんですか! それじゃ結局、また私ひとりで来たみたいじゃないですか。それに、慎吾さんがいたら、河村さんからもうまく話引き出して下さいよ」
「えぇっ……」
目と鼻の先にランコントゥルが見えた頃に、勇気を出して切り出したものの敢え無く玉砕。
逆に自分で自分の首を絞めるような結果になって、口を閉ざす他なかった。
いつもなら、店先に少しずつ近づくだけでドキドキワクワクする心境が、今日は全く違うものだ。
ハラハラビクビク。
別に悪いことは……してないはずなのに、なんでこんなに居心地が悪いんだろう。
足元からの大きな窓ガラス越しに、店内の様子を窺い見る。
私の気持ちなんか関係なく、そこにはいつもの穏やかで温かい印象の〝patisserie de rencontre〟があった。
「今日こそ会って、話出来るかなぁ」
志穂ちゃんは、ウキウキとした様子で歩き進める。
私は、無意識に顔を隠すように俯き、志穂ちゃんの後をついていった。
店内に入ると、想定外の場面に遭遇する。
「そうそう。そのフランスの……あ。お客さんだね。じゃあ、また」
「ああ、気をつけて」
ショーケース越しに、親し気に笑い合って会話を交わしていたふたり。
こちら側に立っていたのは女の子。
その子は私たちの入店に気づくと、話を止めて、出口へ踵を返した。
目前まで来た時にその子を見ると、まるでお人形のような顔立ちの可愛い子で目を奪われる。
透き通るような白い肌に、カールされてる長い睫毛。
大きな瞳は少し色素が薄くて、本当に造られたもののように美しい。
ふわふわとしたスカートを揺らし、胸までの茶色いロングヘアを靡かせ、私たちを横切って行く。
その際、視線が合うと、にっこりと三日月のように目を細められた。
……いい香り。さりげなく甘くて、見た目通りの香りだ。
すれ違いざまに軽く会釈され、つい、彼女の後姿を目で追ってしまった。
「こんばんは。慎吾さん!」



