レジカウンター一点を見つめ、軽く首を横に振った。
 
いやいや! それは……それだけはないと思うし、思いたい。
たぶん、真面目なタイプだし、私と同じでなにを言っていいのかわからなくて連絡できないのかも!
 
ぱぁっと明るい表情で顔を上げる。が、すぐに青褪めた。
 
いや、そもそも真面目だとしたら、こんな微妙なことになる……?
 
もうとっくに許容量超えている脳内は煙を噴いている。

「あの~。閉店時間、過ぎましたけど。レジ閉めしてもいいですか?」
「はっ。ごめん! うん、お願いします!」
 
物の怪でも見るような目でスタッフに言われて我に返る。
わざとらしい笑いと怪しい動きでその場を去り、バックヤードへと移動した。

誰もいないことを確認し、扉を閉めて息を吐く。
すると、すぐに背後の扉が再び開いて肩を上げた。

「かーわむらさんっ。予定通り上がれそうですか?」
「し、志穂ちゃん! う、うん。大丈夫……」
「わー、よかったですー! じゃあ、私も頑張って売り場整理してきますね!」
 
志穂ちゃんは、今にも鼻歌を歌いそうな勢いで売り場に戻って行く。
今度こそひとりきりになった私は、改めて「はー」と息を吐いた。
 
ああ。本当に行くんだ、私。
今まで閉店間際にはお客さんがいなかったし、今日ももしかして私たちだけかもしれない。
そうしたら、どう足掻いても神宮司さんに気づかれちゃうよね。
 
一体、私は顔を合わせたらなにを口にしてしまうんだろう……。

「はぁー……」
 
今日一番の重く深い溜め息を吐くと、しばらくその場から動けそうになかった。