ドルチェ セグレート

「でも、普通のお客さんって感じでもなかったですよね? あ! イケメンパティシエに『再来店ありがとう』って言われてたし、常連客から成りあがったんですか?!」

『成りあがった』って……。

グイグイと詰め寄られ、たじろぎながら小さな声で説明する。

「たまたま、前回と今日との間隔が短かったから覚えてくれてただけで、常連って程行ってないよ」
「えー。本当ですか?」

嘘は吐いてないし。
わざわざ、昨日デパートで偶然会ったくだりを言う必要もないだろうし。

志穂ちゃんの疑いの目に、「本当、本当」と流すように答える。
すると、納得してくれたのか、近づけていた顔を離して腕組みしながら明るい声に変える。

「それにしても、あのお店のパティシエはふたりともイイですね! 雑誌に載ってたイケメンは写真通りだったけど、もうひとりの彼も違うタイプでよかったです!」

彼女は目をキラキラとさせ、少し仰ぎ見るようにして手のひらを合わせて言った。

「……そうだね」

このノリにどう答えるのが正解なのかわからなくて、引きつった笑顔を浮かべる。
それと、どこか、心の奥でモヤモヤとしているから、浮かない返事しかできないでいた。

志穂ちゃんが、ミーハーな気持ちでランコントゥルに興味を持っていたことは、初めから知ってる。

それも、純粋にあのお店のスイーツが好きな私にとっては、微妙な気持ちになったものだけど、今はそれとはまた違う気がする。

これって……独占欲?