「そうじゃなくて。勝ち負けとかじゃなく、ケンカにでもなって、神宮司さんの手が使えなくなったりしたら……。仕事出来なくなっちゃったら、神宮司さんのケーキを楽しみにしてる人が悲しんじゃう」
そんなことになったら、私もいちファンとして悲しいし、責任を感じちゃう。
それに、お客さんもがっかりするけど、なによりも、神宮司さんが辛くなってしまう。
あんなに苦しんでも、真剣に向き合うくらいに大事な仕事なんだもの。
それを奪ってしまうようなこと、絶対にしたくない。
心から安堵し、気を緩ませた私は、ヘラッと情けない顔で苦笑した。
「まぁ、あれですよね。私なんかで、そんな展開になんかなるはずない、し……」
なにがなんだかわからないけど、安心からか、涙が零れ落ちそうになる。
それを隠すべく、俯いた。すると、ふわっと温かな空気が顔を掠めた。
刹那、あの甘い香りと共に、頬へと熱が灯される。
触れられたのは、私の左頬。触れているのは、彼の指先。
触れられている箇所は、ほんの少し。
なのに、そこに心臓があるかのように大きく脈打つ感覚に陥ってしまう。
その腕から、上へと辿っていくと、精悍な顔の彼が眉を下げて笑った。
「そのときは、殴ってでも離さなかったよ」
蕩けてしまいそうな甘いセリフに、身体がふわふわとしてしまう。
これは、夢? 聞き間違いじゃなかった?
大きくさせた目を揺らがせ、ただ小さく口を開いたまま神宮司さんを見つめる。
「……なに?」
「や、なんかもう……。都合のいい夢を見てるのかと……」
「ふーん? そういう動揺した顔も嫌いじゃないけど。もっといい顔見せてよ」
「い、いい顔? え? なんですか?」
どぎまぎとして尋ねると、神宮司さんが突然顔を近づけてきた。
そんなことになったら、私もいちファンとして悲しいし、責任を感じちゃう。
それに、お客さんもがっかりするけど、なによりも、神宮司さんが辛くなってしまう。
あんなに苦しんでも、真剣に向き合うくらいに大事な仕事なんだもの。
それを奪ってしまうようなこと、絶対にしたくない。
心から安堵し、気を緩ませた私は、ヘラッと情けない顔で苦笑した。
「まぁ、あれですよね。私なんかで、そんな展開になんかなるはずない、し……」
なにがなんだかわからないけど、安心からか、涙が零れ落ちそうになる。
それを隠すべく、俯いた。すると、ふわっと温かな空気が顔を掠めた。
刹那、あの甘い香りと共に、頬へと熱が灯される。
触れられたのは、私の左頬。触れているのは、彼の指先。
触れられている箇所は、ほんの少し。
なのに、そこに心臓があるかのように大きく脈打つ感覚に陥ってしまう。
その腕から、上へと辿っていくと、精悍な顔の彼が眉を下げて笑った。
「そのときは、殴ってでも離さなかったよ」
蕩けてしまいそうな甘いセリフに、身体がふわふわとしてしまう。
これは、夢? 聞き間違いじゃなかった?
大きくさせた目を揺らがせ、ただ小さく口を開いたまま神宮司さんを見つめる。
「……なに?」
「や、なんかもう……。都合のいい夢を見てるのかと……」
「ふーん? そういう動揺した顔も嫌いじゃないけど。もっといい顔見せてよ」
「い、いい顔? え? なんですか?」
どぎまぎとして尋ねると、神宮司さんが突然顔を近づけてきた。



