ドルチェ セグレート

 
間髪入れずに答えた神宮司さんの言葉に、足が止まった。
 
この場を凌ぐための嘘を吐く人じゃないとは思ってる。
だけど、こんなにもストレートな彼の表現は、初めてだったから。
 
驚いたのは、それだけじゃない。
それを言ったときから、ずっと手を握られていることにもびっくりして。
 
左手が、ぎゅ、と強く包まれている。
それが、神宮司さんの真っ直ぐな想いだと感じると、私も同じように彼の手を握り返した。
 
諏訪さんは、私たちを交互に見やって、軽く息を吐く。
それから視線を落とし、額に手を当て、苦笑いを浮かべた。

「……参ったな。昨日とは、まるで別人の目をしてやがる」
 
そう零した諏訪さんは、踵を返したのちに顔だけ振り向かせる。

「そういうことなら、とりあえず……様子見でもさせてもらうよ」
 
最後にそれだけ言い終えると、夜の闇に消えるように去って行ってしまった。

『とりあえず』とか、『様子見』とか言ってはいたけど、きっと諏訪さんは納得してくれたはず。
だって、最後、私に向けた笑いが、いつもの諏訪さんの笑顔だったから。
 
それにしても、こんな場面に直面なんてしたことなんかないから、一気に緊張の糸が解けてしまう。

「はぁ……」
 
気の抜けたような息を零し、ホッと胸を撫で下ろす。
すると、真ん前に立つ神宮司さんが振り向いた。

「ごめん。俺がもうちょっと早く意思を示しておけば、こんな面倒なことには」
「あ、いえ! 殴り合いになったりしなくてよかった……と」
「オレが負けたらどうしようって?」
 
冗談めいて返す神宮司さんに、真顔で見上げて頭を横に振った。