ドルチェ セグレート

ちょうど目的階について地下二階のフロアで降りると、甘い香りや香ばしい匂いに包まれる。
フロアを速足で歩き進め、右奥の角に木目の看板が見えてきた。

【entremets】――アントルメ。洋菓子のお店だ。

ここもまた、ランコントゥルに次ぐ、私の好きなお店。

今日はこのアントルメで出されている、期間・数量限定のケーキを買いにきた。
期間はまだもう少し猶予があるみたいだけど、その分一日の個数が少ないらしく、開店してから間もなくして完売してしまうと口コミで見た。

店内に入り、ショーケースへと真っ直ぐ向かう。
上段の真ん中に、【アンサンブル】と手書きの札があり、その奥にはお目当てのケーキが十個程度並んでいた。

おおっ! これかぁ! 
ミルクティ色のクリームと、チョコクリームの二層になったケーキ。
特に派手さはないけれど、ラズベリーとミントが添えられていてオシャレだなぁ。

食い入るように綺麗に磨かれたガラスケースの向こうを見つめていると、背後では続々とお客さんが訪れる。

平日の開店直後でも、こんなにお客さんが来るんだ。ウチの店とは大違いだ。
まぁ、ジャンルがちょっと違うから仕方ないんだろうけど。

見る見るうちに賑わう店内を横目にしていると、いつの間にか店員さんの前には数人並んでいて、慌てて最後尾に付く。
目当てのアンサンブルが無くならないかとヒヤヒヤしつつ、自分の順番までケーキの存在を気にしていた。

「お次のお客様、お待たせ致しました」と声を掛けられた時には、まだ個数に余裕があって、心底ほっとする。