「じゃあ、コイツは今の話で言う前者ですか? ……それとも、後者?」
 
静まり返る店内に聞こえた諏訪さんの質問に、ゴクリと息を飲む。
 
この答えが、私がずっと気になっていたことの証明になる。
ドクン、と大きく心臓を鳴らし、恐る恐る首を神宮司さんへと回した。
 
どんな答えを聞かされるのだろう。
こんなギャラリーのいる前で、どんな顔していたらいいの……?
 
バクバクと、今にも破裂しそうな自分の心臓。
ギュッと掴まれるように、痛みすら感じる。
 
沈黙が長く感じる。一秒、また一秒と、そのしん、とした時間が伸びる度、視線が徐々に下がっていく。
いよいよ、ただ迷ってるだけの無言ではなさそうだと不安な気持ちが立ち込める。
 
微妙な空気の中、開口したのは諏訪さんだった。

「黙秘するあたり、信用できないな」
 
未だに黙っている神宮司さんに向かって、ひとこと吐き捨てる。
「行くぞ」と促された私は、そのまま神宮司さんを見ることなく外に出てしまった。
 
店を出た直後も、なんだか怖くて振り向くこともできない。
スタスタと帰路を辿る諏訪さんを、小走りで追いかけた。

「諏訪さんっ。なんで、あんなこと言ったりなんか……!」
 
相手が上司だろうと関係ない。
さすがに今日のことは、私が怒りを露わにしてもおかしくないことだったし!
 
ちょっと怒り口調で諏訪さんの背中に投げかける。
それなのに、なんの反応も返ってこなくて、尻すぼみするように付け足した。

「ウチのバイトの子が、なんか言ったんですよね?」
 
閑静な夜の住宅街は静かで、自分の声が震えてることに気づかされる。
 
諏訪さんが、無視するようになにも言ってくれないことが理由じゃない。
胸が切なく締め付けられる痛みの原因――。

それは、神宮司さんの〝沈黙〟だ。