ドルチェ セグレート

上品な笑顔と声で「いらっしゃいませ」と、可愛らしい女の子に恭しくお辞儀をされる。
私はそれに恐縮するように軽く頭を下げ、自分よりも一〇センチは低いであろう女の子の前を横切った。

チラッと去り際に彼女を何気なく見ると、向こうも顔を上げたところでバッチリと目が合ってしまった。

栗色のふわりとした髪と、白くて小さい顔。
そして、大きな瞳。その目を優しく細めると、その子は私にもう一度軽く会釈をした。

私は立ち止まらずにそのまま目的の場所へと向かいながら、一瞬向けられた天使の微笑みを脳裏に浮かべる。

本当に可愛い子だったな。
やっぱり、大手デパートの受付嬢って、あのくらい高いレベルを採用するのか。
同性の私ですら魅入っちゃうくらい、お人形のような顔立ちだったなぁ。

エスカレーターに乗り、鏡張りになった壁に映る自分を見て、自嘲気味に小さく笑う。

比べて私は、どこにも可愛い要素がないなぁ。

見た目はもちろん、中身も可愛いという形容詞に当てはまるものを持っていない気がする。
どちらかというと痩せ気味で、背も高い方に属されるくらいの私には、可愛らしいっていう部分は持ち合わせてないだろう。

……志穂ちゃんにも『男らしい』って言われるくらいなわけだしね。

昨日のひと言を思い出して、ほんのちょっと傷つく。

確かに、どちらかといえばガサツな女に部類するのかもしれないけど。
でも、部屋はゴミ屋敷なわけでもないし、料理だってある程度のものは出来るし、言葉遣いだって接客業をしてるわけだからおかしくはないはず。

だけど、どうしてか……。人って〝見た目〟の印象がやっぱり大きいのか。
一年ちょい一緒に居た元彼さえ、〝第一印象〟を引きずられてたというか。

可愛らしさとはかけ離れてる、サバサバした女だというその印象が根付いてて。

結局、本当の私を出した時には、引かれるか笑われるか……。
あ、思い出したらムカついてきた。