舞踏会が終わり、アリスは一足早くエドと部屋へ戻ろうとしていた。
廊下で立ち止まると、先ほどのリエルの顔が思い浮かんだ。
「アリス様・・?」
どうして、あんなに悲しそうな顔をしていたんだろ・・・。
カサっ・・
すると、窓の外の中庭から人の気配が。
エドがアリスの前に出た。
「待って。」
アリスはエドの肩を掴んだ。
中庭に出ると、噴水の畔に誰かが座っている。
「・・ぐすっ・・」
泣き声・・・?
灯りを照らすと、噴水に腰かけ泣いているリエルの姿に気が付いた。
「・・リエル様?」
「アリス様……」
リエルは驚き、慌てて頬を伝う涙を拭った。
「・・エド、下がっていいわ。」
「分かりました。」
アリスはエドを帰すとランプを大理石でできた噴水の畔へ置いた。
「・・さぁ、座って下さい。」
アリスは優しくリエルを座らせた。
少しだけ冷たい風が中庭を吹き抜ける。
舞踏会の会場は大勢の人々の熱気で少し暑いくらいだった。
リエルは俯き手をギュッと握りしめている
「いくら王宮の中でも、護衛もなしにこんな所で一人で居ては危ないですよ。」
アリスの言葉に、リエルが顔を上げた。
暫くリエルは黙り込んだ。
夜の冷たい風が中庭に吹き込む。
「キース様というお方を知っていますか。」
「キース様?」
リエルはコクンと頷いた。
「・・私の、婚約者でした。」
婚約者・・?
あの、キース伯爵が、リエルの・・・。
リエルの瞳に再び涙が浮かんだ。



