考えを巡らせていると、お母さんが懐かしそうに笑って、こんなことを言う。


「小夜ってば、律くんと結婚するー!ってよく言ってたじゃない? 本当に相手があの子なら、私は何も心配しないんだけど」

「ま、まぁ律くんならいい子だし、百歩、いや千歩譲って嫁にやっても……」

「話飛びすぎ」


真剣に悩みだすお父さんに苦笑いしながら、私はやっと腰を上げた。



──律のお嫁さん。

いつかそうなる日を、私は本当に夢見ていたんだよ。

子供の頃のそんな夢を、今でも心の片隅に持っている私は哀れかな。


でも、今日で綺麗さっぱり捨てることになるかもしれない。

すべては、律次第だ。


たくさんの不安と、ほんの少しの希望を抱きながら、出掛ける準備を始めた。

今日選んだのは、ノースリーブのワンピースに、かぎ編みのサマーニットを合わせたファッション。

いつもは下ろしている長い髪も、大人っぽいハーフアップにしてみた。


せっかくだから、いつもと違った自分を見てもらいたい。

ふたりで出掛けるのは、これが最後になるかもしれないんだし──。