お母さんは両手を腰にあて、本音をこぼす。


「なんだ、違うの? いつ小夜が彼氏を連れてきてくれるのかなーって、私ずっと待ってるんだけど。できることならイケメンがいいわね」

「お前……」


がっくりとうなだれるお父さん。

一人娘の色恋沙汰で、朝から一喜一憂している両親はちょっと面白い。


「そういえば、恭哉くんのお母さんから聞いたわよ! 律くんこっちに戻ってきてるんだって?」


洗い物を始めるお母さんに、急に律の名前を出されて、また私は席を立てなくなってしまった。

お父さんも驚いたように私に目を向ける。


「そうなのか?」

「うん、実は……」


なんとなくふたりには言っていなかったんだよね。

電話も手紙も内緒でしてたから、そのクセがついたせいというか。


「また皆で遊べばいいじゃない。私も律くんのお母さんと会いたいわ。引っ越してから全然連絡取ってなかったから」


そっか……律の事情を探るなら、正攻法じゃないけどお母さん達に聞くっていう手もあったんだ。

だけど、この感じからすると、お母さんも何も知らなさそうだなぁ。