ちょっと待て、このまま帰らせるもんか!

今日はなぜか強気な私は、とっさに身体が動いて……。


「っ!?」


真正面から彼の行く手を阻むように、ビタン!と、壁に片手をついた。

まさかの壁ドンをされた律は、驚きで目をまん丸にしている。


「じゃあ、私を優先して」


私の口から飛び出た一言で、さらにぽかんとする律。

数秒経ってから、彼はぎこちない笑みを見せながら唇を動かす。


「んな、強引な……」

「私は、何年も前から約束してるの」


真剣に言うと、彼の顔からも笑みが消えていく。


「“いっぱいデートしよう”って約束。律は覚えていなくても、私がちゃんと覚えてる。有効でしょ?」


私達が想い合っていたことがわかるような発言。

どんな反応をされるかわからないけど、ここで引いたら負けだから。


「お願い」


彼の横に手をついたまま、強く懇願する。

至近距離で見上げた綺麗な顔が、一瞬切なげに歪んだ気がした。