「……律」


こちらを向く彼に、胸が締め付けられるのを感じながら微笑みかける。


「手当てしてくれてありがとう」

「いや。お大事にね」


優しい笑みで言う律に頷くと、背を向けて保健室を後にした。


ざわめく心はまだ落ち着かない。

連絡が取れなくなっていた期間に、いったい何があったんだろう。

何を隠しているんだろう……。


きっと簡単にはわからない。本当に、忘れているフリをしているのかも定かじゃないけど……

まだ諦めないよ。しつこいってウザがられても。

律が私のことを“小夜”って呼んでくれるまで、諦めたくない。