「四年しか経ってないのに、俺達のこと覚えてないなんて普通じゃねーな。記憶喪失にでもなってなきゃありえないだろ」


──記憶喪失。

さらっとキョウの口から出されたそれは、私も昨日から何度か頭に過ぎっていたけれど。


「……本当にそんなことがあるのかな?」

「んー……。でも、そう考えれば一番つじつま合うよね」


ありさと一緒に腕を組み、パンを食べることも忘れて考え込む。

記憶喪失だなんて、実際になった人は周りにいないし、ドラマやマンガの中でしか起こらないんじゃないかって思っちゃう。

ふたりで難しい顔をして唸っていると、すでにお弁当の半分を食べたキョウが、不思議そうに私達を見る。


「何のこと言ってんの?」

「キョウが言ったんじゃん、記憶喪失って!」

「……ぁあ」


今頃はっとするキョウ。

無意識に口走ったのかもしれないけど、自分で言ってその可能性に気付いてないって、ほんとおバカ……。

さっきの怒りっぷりが嘘のように、スイッチが切れてボケボケな彼に呆れていると、ありさが何かを決めたようにパンッと手を叩いた。