「ありさ!」

「いつの間に」

「邪魔しちゃ悪いと思って、黙って聞いてたけど堪えられなかったわ」


私の左隣に並ぶありさと、今さらながら「おはよー」と挨拶し合う。

私のロングヘアをひとつに束ねている、春休み中に買ったシュシュにすぐに気付いた彼女は、「可愛いじゃん」と言って笑った。


中学で一緒になったありさは、気が合うし何でも話せる友達。サバサバしていて、飾らない彼女が大好きだ。

ありさも同じクラスだから、キョウも含めて三人でいることが多い。

いつものメンバーで並んで歩いていると、大きく伸びをしながらありさが言う。


「かったるいなー始業式。どこの校長もあんなに話長いもんかね」

「あのヅラがふっ飛んでってくれれば多少笑えるんだけどな」

「多少どころじゃないから!」


無表情のキョウの言葉に、今度はありさが爆笑しながらツッコミを入れた。

やっぱりこの人のボケは天然か……。

私もつられて笑っていると、男友達がキョウに声を掛ける。彼は「じゃ、また後で」と私達に軽く手を挙げ、そっちに向かっていった。