「キョウ、眼科行った方がいいんじゃない? あいにく500グラムも増えてませんので」

「いや、もう少し肉付いた方が美味そうに見えるなと思ってたから」

「何気なく変態発言するな!」


顎に手をあてて品定めするように見る彼の脇腹に、パンチを繰り出した。

この男、ボケてるのか天然なのか……。こういうコト言わなさそうに見えて、実はさらっと口にしちゃう人だから危ないのなんの。

私のしょぼいパンチなんてまったく効いていない様子で、キョウは平然と歩いている。


「次変なこと言ったら本気で殴るからね」

「強気だな。お前、俺の腹筋割れてるって知らないの?」

「知るか!」


あんたのカラダなんて、そんなまじまじ見たことないに決まってるじゃん!

澄ました顔を保つキョウにツッコミを入れると、私達の後ろから笑い声が聞こえてくる。


「新学期早々やめてー、その夫婦漫才。ツボる」


ふたりして声の主を振り返ると、ショートヘアの女子がケラケラと笑っていた。

ボーイッシュだけど、大きな瞳とアヒル口が可愛い、親友の棚橋(たなはし)ありさだ。