『そうだね。その頃はもう“どろけー”とかやらないんだろうなぁ』

『あははっ』


涙を堪えて笑う私に、微笑みかけた律は、『それでさ……』と言葉を繋げる。

なんだか真面目な表情になる彼を、黙ってじっと見つめた。


『大人になったら、結婚しよう』


彼の口から飛び出した一言を、すぐには理解できなかった。

目と口を開いて、ただただぽかんとするだけ。


『けっ、こん?』

『……意味わかってる?』

『わ、わかってるよ、もちろん!!』


私の顔を覗き込んでくる律に、少しだけ身を引いた。

あと6年経てば私達も結婚できるってことはわかってるけど……でもでも、結婚って!!


その時の私にとってはあまりにも現実から掛け離れた話で、驚きすぎて軽くパニックに陥った。

けれど、律はまったく冗談を言っているような調子じゃなくて。

真剣な瞳で私を見つめるから、彼の言葉をちゃんと受け止めなきゃ、と気持ちを落ち着ける。


『俺、ずっと小夜と一緒にいたいし、守ってやりたいんだ。だから、今はちょっと離れるだけ。な?』