『そうやって泣かれるのも困るんだよ』


あの言葉を放ったのは、私を面倒臭いと思ったわけじゃなくて、涙を拭うことができなかったから……?

律は、これまで何度もこんな悔しい思いをしてきたんだ。

胸が切り裂かれそうなくらい痛くて仕方ない。



──でも、もうひとりでそんな思いはさせないから。

私だって気持ちは同じだよ。律のそばにいるのに、何もしないままでなんていられない。


私には自由に動く手足がある。

それはきっと、自分だけじゃなく、誰かを助けるために。


「……涙なんて、ひとりで拭えるよ」


手の甲で目元をこすった私は、ぐしゃぐしゃの顔で律をまっすぐ見つめる。


「私、そんなに弱くないんだから。律のこと、支えるくらいの力はある」


力強く言い切ると、赤くなった彼の目が少し見開かれた。


「手が震えるなら、私が律の手になる。動けないなら、私が足になるよ。だから……」


ベッドに置かれた手を、両手でぎゅっと握りしめて、必死に涙声をあげた。


「だから、一緒に生きよう?」