たしかこれにお菓子を詰めて、餞別のつもりであげたんだよね。

こんなの、とっておいてくれたんだ。

懐かしさが込み上げるけど、今は中に何が入っているのか気になる。


ちらりと律を見やるも、まだ起きる気配はない。

……ちょっとだけ、見てもいい? ちょっとだけだから!

好奇心が勝ってしまった私は、心の中で勝手に律に断りを入れて、読もうとした本を一旦棚に戻した。


そっとふたを開けてみて、目を見開いた。

中に入っていたのは、これまた見覚えがある封筒の束。

私が送った、手紙の数々だった。


全部、大事にとっておいてくれたんだね……。

嬉しさを噛みしめるけれど、ひとつだけ気になるものがある。

箱の隅に無造作に入れられた、たぶん私のものではないぐしゃぐしゃに丸められた紙。

これは何だろう……。


気になって、また“ちょっとだけ!”と心の中で言い、ゆっくり開いてみると。

驚きで、ドキンと心臓が跳ねた。

シンプルな便箋には、“緒方 小夜さま”と書かれていたから。