目線を上げた彼は、意を決したように真剣な表情でこう言った。


「律の病名は、若年性パーキンソン病というんだ」


どこかで耳にしたことがある、その名前。

でも、どんな病気なのかはわからない。


「若年性、パーキンソン病……?」

「そう。今は進行を止める治療薬がなくて、難病に指定されてる」


──難病。

その重々しい単語を耳にして、ドクンと鈍い音が身体の奥で響いた。


「パーキンソン病っていうのは、簡単に言うと、脳から出るドーパミンが減って、運動がスムーズにできなくなる病気なんだ。
高齢者に多い病気なんだけど、若くして発症するケースもある。……律みたいに、10代で発症する人は稀(まれ)らしいけど」


まるで自分が宣告されるような気分で、呆然としながら、でもしっかりと耳を傾ける。

えっちゃんは、私にもわかるようにかみ砕いて説明してくれた。


最初は片側の足や手が痛くなったり、震えたりして気付くことが多いらしい。

歩き始める時に足が前へ出ない“すくみ足”という歩行障害が出たり、身体が強張ってゆったりとした動作しかできない、といった症状が出るのだという。