悲しいくらい綺麗な夏の終わりの夕暮れ空の下、公園のベンチでその話を聞いた私は、駄々っ子みたいに泣き続けるだけ。

そんな私の手が突然ぎゅっと握られたかと思うと、律は語気を強めて言った。


『俺だって嫌だよ。でも、しょうがないだろ……』


その時の彼は、整った顔をとっても苦しそうに、悔しそうに歪めていて。

こんな表情を初めて見た私は、一瞬泣くのも忘れて冷静に考えた。


律は、私以上に悲しいに決まっている。

私だけじゃなくて、キョウとも、クラスの皆とも離れるんだもん。すごく、すごく辛いよね。

でも、彼は必死に堪えてるんだ。私が泣いててどうするの?


ぐっと唇を噛みしめてなんとか涙を押し止め、握られていない手で濡れた頬を拭った。

そして、上ずる声で言葉をつむぐ。


『……離れても、私のこと忘れないでね』


泣き言ではなくなった言葉を聞いた律は、顔を上げて私をじっと見つめる。

私も目を見合わせて、必死に笑顔を作ってみせた。


『ずーっと、私は律のこと大好きだよ』