「意外と女子力あるくせに、ギャップ萌えしないのはなぜだ」

「スペル間違えたおバカは黙ってな」


静かに怒るありさは、じとっとキョウを睨み据えていた。


そう、皆に『せっかくだから何か手伝え』と言われたらしく、プレートにチョコペンで文字を書いたのはこの男。

一応私の誕生日を一緒にお祝いしに来てくれている……はずなんだけど、ただ美味しいランチを楽しんでいるだけのように見える。

いや、きっとそうだ。


でもやっぱり、皆でわいわいと楽しい誕生日を過ごせるだけで嬉しい。

女子4人の中に違和感なく紛れ込んでいるキョウにもケーキを切り分け、甘く美味しいそれを頬張った。


「前よりは元気になったな」


ふいに、キョウが私だけに聞こえるくらいの声で言った。

優しい表情をする彼に目を向けて、私も小さく微笑んでみせる。

夏休み前、失恋直後はしばらく落ち込んでいたから、皆に心配かけさせちゃったんだよね。

でも、大丈夫。今こうして笑うことができているんだから。

少しずつだけど、ちゃんと律のことは思い出にできる……。