子供の頃、泣いた私をなぐさめてくれるのは、いつだって律だった。
でも、彼は今、そばにいない。
これからもずっと、いることはない。
『律はお願い事、何て書いたの?』
『“サッカーが上手くなりますように”。小夜は?』
『私は……秘密』
想いが通じるよりずっと前の七夕に、カラフルな短冊を手にした私達は、こんな会話をしたことを覚えている。
恥ずかしくて言えなかったけど、私の願い事は、“律のお嫁さんになりたい”だったんだ。
神様、今度は叶えてくれますか?
私に、律がいない人生を歩んでいく力をください。
もしも、それは自分で切り開けと言うのなら……
彼を苦しめる何かを、取り除いてあげてください。
どうか、彼を幸せに──。