「何やってんの?」

「部活やって、ダチと遊んでた。そっちは……」


私の全身を一度上から下まで眺めた彼は、思い出したように「あ」と声を漏らした。


「そいや、今日はデートだったか。どうだった?」


直球で聞かれて、あえて考えないようにしていた今日のことが、全部あっさり蘇る。

胸のときめきと、痛みの両方が。

相変わらず無神経だなぁ、まったく……。


「今日、告白するって知ってたくせに普通に聞いてくるなんて……ほんとデリカシーないんだから、キョウは」


いつもの言い合いをするような元気はなく、おかしくもないのに笑いながら俯いた。

すぐに笑顔は消えて、そのままぽつりと言う。


「律……覚えてるみたいだったよ、昔のこと」

「え?」


真剣な顔をするキョウへ目線を上げられないまま、私は話し続ける。


「でも、何で知らないフリしてたのかも、何があったのかも教えてくれなかった。……私の気持ちも、受け止めてもらえなかった」


口にすると一気に悲しみが襲ってきて、一度は止まった涙がまた溢れ出す。