月、満ちる夜に


 戦で知己を亡くすことも、親を見殺しすることもないのだ。


 だからほんの少し時間、ともにいただけの香月が自分のために泣いている。


 夢だとはいえ、なんて羨ましい世界だろう。


「いまさらだろう? 俺はもう死んでるんだから」


 香月に言い含めるように笑う。


 いつしか胸の内に渦巻いていた怒りは消えていた。


 両親を慕う香月に感化されて、別の道が開けたとでも?


「礼を言う」


 香月の髪に触れる。


 これからこの世を去る自分に、これ以上彼女がショックを受けないように。



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