月、満ちる夜に


 飲みなさいと出される杯。


 明らかにおかしな色の酒が注がれた杯に毒が入っていることは明らかなのに、お飲みなさいと母が告げるのを拒めない。


 母に恨まれても当然のことをしたのだから。


 ――なのに。


『若っ、若!!』


 今までとは違う夢が、自分の知らない過去へと導こうとしている。


「成実(しげざね)……」


 あまりに悲痛なその声に、応えずにはいられなかった。


 途端、身体が重くなる。


 学生服の質感が肌から消えて、代わりに肌の上を滑るのは慣れ親しんだ着物だ。


 これは、夢じゃない?


 ――待て!


 唐突に理解した。


 分かってしまった。



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