月、満ちる夜に


 眠ると身体は元いた場所に引き寄せられて、激動の渦に翻弄される。


「伊達君! 伊達君!?」


 香月の声が遠のいていく代わりに、喧騒が頭の中をかき鳴らし、手の中から滑り落ちた杯の割れる音がゆるやかに心臓に響くのだ。


 ――なのに。


『――か! 若っ!』


 と、低い声音の焦る声が聞こえた。


 昔からよく知る男が自分に呼びかけているのだと分かる。


 なんだ、これ?


 こんなパターン、これまでにはなかったはず。


 いつもは母が目の前にいて、おぞましいものを見るように自分を見ている。



.