翌日の朝食に買っていたレモンを添えた。

爽やかな酸味と頭がスッキリする様な香りに包まれて始まる1日。


今日はいい日になりそうだ…と思った。


今日こそは、そういう日であって欲しい…と願う。



いつからこんなふうに願う様になっただろう。

昔はもっと、何も考えずにいても幸せだった筈なのに。



……何かを求めることを諦めている日々だった。

今、この一瞬さえ乗り切れば…と思うようになってしまった。


…そう。


かれこれ10年くらい前から………




「暗い!暗い!明るくしないと!」


心の片隅に置いてある小野寺さんの手紙を思い出した。

彼に言われるまでもなく、あの人の手紙は今や私の心の拠り所になっている。


大事な人のように感じている。

会ったことも無い、『小野寺 漠』という人がーーーー。



「…バカな私。全く何も知らない人なのに…」


クスリ…と小さく笑った。

あの人から手紙が届くようになって、気がつくと少しだけ笑える機会が増えている。


今までのように無理した笑いではない。

自然と笑みが浮かんでくる。

どうか、このままずっと、笑う機会を与え続けていって欲しい。


心からの感謝を文字にして送れる間は、私自身がとても幸せだからーーー。