* * *

「ねぇ、綾乃は結婚、どうするの?」
「へっ!?」

 25歳にもなると、結婚ラッシュである。24歳の時には結婚式に2回。今年に入ってからは4回呼ばれている。全部出席したとは言っていない。(結婚式、実は正直好きじゃない。)

「彼氏、いるんだよね?」
「ま、まぁ。」
「結構長いこと付き合ってない?」
「まぁー…1年半以上?」
「じゃあさ、そろそろ結婚じゃない?」
「そ、そっかぁ。考えてもなかったなぁ。」

 いや、少し頭の中をかすめることはあっても、リアリティのあるものとしては考えていなかった。それに健人は絶賛就活中だ。そんな健人に余計なことを考えさせたくない。

「あ、綾乃さん?」
「え?」
「あ、噂の綾乃の彼氏!」
「…こんにちは。」

 にっこりと笑う健人。なんというタイミングで現れたのだ、こいつは。

「丁度ね、今そういう話をしてたのよ。」
「ちょ、ちょっと待ってその先を言ったら怒るからね。」
「綾乃なんていつだって怒ってるじゃないの。あのねー、健人くん?実際綾乃と結婚する気はあるの?」

(ば、バカ!何てこと言うんだ!確かにあたしは結婚適齢期かもしれないけど、健人は違うっつーの!)

「健人ごめん、いいの聞き流して。この子本当に恋愛脳で…。それより就活中だったんじゃないの?」
「え、あー…うん。面接行ってきた帰りだよ。それと、その質問、お答えしますね。結婚する気、ありますよ。だから今必死なんです。
…綾乃ちゃん、ごめんね、ご飯の邪魔しちゃって。たまたま目に入ったから思わず声掛けちゃった。先に帰ってるから、ゆっくり過ごしてね。」

 柔らかく笑う健人に、胸がざわついた。いつの間に、そんな風に笑うようになったんだろう。あんなに大人びた笑い方を、もしかしたら自分は知らないかもしれない。