◇◇◇◇◇◇

頭を動かすと、ザリッという音が耳元で聞こえた。

なんだか腕が下に引っ張られるような感覚に、思わず私は眉を寄せた。

いや、誰にも掴まれてない。

けど、腕がブラーンとして重い。

頭が痛い。

瞼を閉じているにも関わらず、明るい日差しを感じて私はうっすらと眼を開けた。

……真っ青な空が見える。

異常に近い距離に立派な枝も見える。

……松の枝だ。

独特の針のような葉が懐かしい。

子供の頃遊んだよ。

松の葉を使って引っ張り合って、割けなかった方が、勝ち……。

……というか、アイツ!

あの、三流武神め。

ここって、木の上じゃないのっ!

なんでこんな場所に……クソッ。

私は舌打ちしながら手近の枝を掴み、そろりと少しずつ身を起こした。

……あれ、私……着物着てる……。

『俺からの心付けだ。受け取れ』

頭の中にミカヅチの声が響いた。

……着物をくれたのはありがたいけど、木の上ってのは……。

もういいや。

ミカヅチは何というか、雑っぽいし。

私は息をついてから太い枝の上に立ち上がって辺りを見渡した。