「でも、ホントはこの不安な気持ち、誰かに聞いてもらいたかった」


だから、ライバルでもなんでもない私、だったのかも。
程よく遠い距離が、彼の告白を誘ったのだろう。


「でも、こんなこと聞いても困るよな」


結城君が項垂れるから、首を横に振った。


「私、結城君が必死に練習してきたの知ってるよ。だから結城君の悔しさも、少しはわかるつもり」

「チョコちゃん……」


『バタフライはあきらめろ』と言われたとき、どんなにショックだったか。
突然夢を奪われて、辛くない人なんていない。


「コーチには、クロールに転向しようと言われてる」

「ホントに?」


それじゃあまだ競泳の世界にいられる可能性があるの?


「でも、腰がダメだから激しいキックは難しい。だから、あまりキックを使わない長距離ならって」

「長距離って……1500?」


彼は大きくうなずいた。