中学校対抗で行われる全中は、やはり3年生が有利。
3年の今年は、出場を期待できたはずなのに。

でも……彼の競泳人生は、これで終わったわけじゃない。


「でも私、ずっと結城君のこと応援してる。きっと結城君なら……」

「そんなに甘い世界じゃない!」


私の言葉を遮った彼は、珍しく声を荒げた。


「……ごめんなさい。私、なにも知らないのに」


余計なことを言ってしまったのかもしれない。
全国トップを目指す選手は、今日も何千メートルも泳ぎ、練習を積んでいる。

水に入ることすらできないでいる結城君が焦るのは当たり前。


「いや、ごめん。俺、ちょっとイライラしてて」

「ううん」


結城君の気持ちは痛いほどわかる。


それから私達は淡々と進む競技を黙って見つめていた。
だけど、頭の中は結城君でいっぱいで、なにも考えられない。