「厳しい世界なんだね」
コンマ何秒なんて、おまけして欲しい。
本当にタッチの差、だから。
「そうだな」
結城君は少し苦しげな顔をした。
そのタッチの差を制して上がってきたはずの彼は、今回、出場することすらできなかったのだから、当然かもしれない。
「チョコちゃんって、雄介と、仲がいいんだな」
えっ……。
気持ちを切り替えたかのような彼は、そう口にした。
「違うの。私の友達の理佐が雄介君と幼なじみで、私が競泳好きだって理佐が話したら……」
口から出てくるのは、言い訳がましい言葉。
違うの。雄介君とは友達で、好きなのはあなたなの。
誤解されたくないと必死になっていると……。
「雄介、その理佐ちゃんって子狙ってるだろ」
「えっ? やっぱり、そう?」
結城君の発言に、ホッとした。



