「ありがとう。また頑張るよ。それじゃ」

「待って!」


結城君が行ってしまいそうだったから、思わず引き留めてしまった。


「あっ、あの……」


心臓が張り裂けそうなほど大きく打ち始めるのを感じる。


「今度の試合は……」


結局違うことを聞いてしまった。


「うん、今度は今月末。でも小さいスイミングクラブであるから、見るのはちょっと難しいかも。春のJOのタイムは切れてるから、次の大きな大会は3月末かな」


JOというのは、ジュニアオリンピックのこと。
彼が小5のときいきなり表彰台にあがったという全国大会だ。

競泳をやっている人達は皆、この大会を目指して泳いでいる。


「また、見に行ってもいいですか?」

「もちろんだよ。応援よろしく」


結城君は少し恥ずかしそうに微笑んだ。