再び彼から離れて顔を見上げると、優しく微笑んでくれた。


「香川のこと、ごめん」

「えっ?」

「茜が水泳部立ち上げを、そんなに深刻に悩んでいたなんて知らなくて、リレーで出たいなんて軽々しく……」


違うよ。
私もリレーの素晴らしさを知っていたからこそ、結城君に泳いでほしかったの。


「卓君にも色々悩みがあったの。それを知ったら私……」

「わかってる。さっき更衣室で」


聞いた、の?


「だからって、香川には負けない」

「うん」


今までで一番優しく微笑んだ彼は、ふと真剣な表情に変わる。


「茜。新品、もらってもいい?」


新品? ……あっ!

それがなんのことかわかった私は、恥ずかしくて頬が真っ赤になるのを感じながら、それでもコクンとうなずくと……。