それでも行かないのもおかしくて、ロッカーの方に向かう。
しばらく人が出入りするのを見ていると……。
「茜」
「ベスト、おめでとう」
「サンキュ」
こんなに素敵な笑顔を持っているんだと思うほどの満面の笑み。
それを見て私もうれしくなった。
「茜のおかげだ」
「私?」
「そう。お前が誘ってくれたから」
「卓君……」
誘ったのは不純な動機。
結城君のために水泳部を作りたかっただけ。
でも、結果としてそう思ってもらえたのなら、よかったのだろうか。
少しの罪悪感が私をチクリと突き刺した。
「200も頑張って」
「わかってる」
200は結城君の1500が終わってから。
だからまだ時間がある。
ふたりで観客席に戻ると、結城君が立ち上がった。
「お疲れ」
「おぉ」
「おめでとう」
「ありがとう」



