25メートル付近まで一度も息継ぎをせず進み、50メートルの時点でその組のトップ。
「その調子」
胸の前で手を組み、ひたすら祈る。
最後は疲れて呼吸が増え、2位に落ちたけれど……。
「ベスト出しやがった」
「ホントだ!」
表示されたタイムは彼が今まで持っていたベストタイムを100分の2秒だけ上回っていた。
でも、ずっと泳いでいなかったのだから、これは快挙だと言っていい。
「やるじゃん、香川」
普段はそりの合わないふたりだけど、努力は認め合えるのがうれしい。
「行ってやれよ」
「……うん」
結城君は気遣ってそう言ってくれたけれど、本当はここを立ちたくなかった。
卓君の過去を聞き、離れられないと思っても、やっぱり私の気持ちは……。



