そう口にしてからハッとした。
これではまるで結城君に卓君が好きだと告白してしまったかのよう。
「優しいんだね」
彼がどこか悲しげにつぶやくと、胸が苦しくなる。
そうじゃないの。私は結城君が……。
だけど、今は言えない。
いや、もしかしたらずっと……。
「小栗君!」
小栗君が入ってくると、精いっぱいの声援をする。
隣の結城君もまた、真剣な眼差しで彼を見つめた。
南高校水泳部、初めてのレース。
いろいろあったけれど、最初の一歩が踏み出せる。
「お願い」
初めてのレースは緊張がつきものだから、タイムは期待しない方がいいと結城君は言っていた。
でも、期待してしまうのは、必死の練習を知っているから。
100メートルはあっという間。
長水路で行われるレースは、ターンは1回のみ。



