「頑張って」
「おぉ」
ふたりとハイタッチすると、彼らは着替えのためにロッカールームに向かった。
「結城君、ちょっとごめん」
結城君とふたりで残ったけれど、私は卓君を追いかけた。
「卓君」
「どうした、茜」
彼の背中は、出会ったころよりずっとたくましくなっている。
「卓君の精いっぱいが見たい」
誰より速くてとかそんなこと関係なく、卓君の今の精いっぱいが。
「わかった」
大きくうなずいた彼は、更衣室に消えていった。
「ただいまです」
すぐに応援席に戻ると、結城君が私を見つめる。
「香川?」
「うん。香川君、ずっといろんなことを誤解して生きてきたみたい。だから、あんなにトゲトゲだけど、許してあげて」



