長距離の結城君と短距離の香川君のメニューは別。
あとのふたりはもう少し遅め。
卓君は結城君の作ってきたメニューに手を入れ、よりハードに変えた。
「無理なんてしてない」
卓君はそれだけ言い残して着替えにいってしまう。
「アイツ、焦って俺みたいにならないといいけど」
結城君はその後ろ姿を見てボソッとつぶやいた。
あとのふたりもすぐに来て、練習が始まった。
結城君は練習に入る前も、必ずプールに一礼する。
本格的なメニューに入る前のアップは、体を温め、動かしやすい状態にするのには欠かせない。
結城君がゆったりと大きく泳ぐ姿に、見惚れてしまう。
やっぱり彼が好き。
でも、もう……手が届かない人になってしまった。
「私、バカだ……」
理佐や泉に言われた言葉を思い出す。
とびっきりのバカ、だ。
一番大切なものを、自分から手放したのだから。



