結城君がやって来たのは、チョコチップクッキー完売後だった。
今日はひとりだ。


「こんにちは」


「いらっしゃいませ」というべきところなのに、普通の挨拶をしてしまい焦ったけれど……。


「こんにちは」


結城君も挨拶を返してくれた。


「クッキー、ですよね」


私がドキドキしながら対応しているのを、理佐がチラチラ見ている。
そして、休憩から戻ってきた先輩たちが私の邪魔をしない様に、適度に話をしてくれているようだ。


「うん。やっぱり売り切れだね」


昨日より20個余分に作ったのに、もう完売。


「はい。でも……」


私は奥に置いておいたクッキーを持ってきて、彼に差し出した。


「いくらだっけ」

「150円です」


もらってくれるならお金なんていらないと言いたいところだけど、そうもいかない。